藍: はじめまして。いろんなメディアでご活躍されている名越先生とお会いできて光栄です。本日はよろしくお願いします。
名越:こちらこそよろしくお願いします。僕で答えられることであれば、僭越ながら何でもお答えしますので。
藍: 精神科医である名越先生が、今一番力を入れている研究のテーマとか教えて頂けますか?
名越:最近は「仏教と心理学」。仏教における業とか修行などと、心理学や精神学との関係をずっと研究しているんです。
今年は仏教系の大学にも講座をひとつ持させていただいて、仏教と心理学の講義をする予定です。
藍: それはたいへん興味深いテーマですね。
名越:藍先生は、どうして占い師になられたんですか?
藍: 私は19歳の時に生死を彷徨うような大病をしたんです。その経験から、生に対しての執着とか生きるっていうことの深
さとか、そういうものをすごく考えさせられました。
名越:僕も友達に占い師をしてる人がいるんですけど、そういう体験をした人が多いってよく聞きますね。
藍: はい。私は自分が生きている意味を考えたら、「人の役に立ちたい」「自分がメッセンジャーとなって何かを伝えなく
ては」という衝動にかられたんですね。そして、ずっとこの職業に憧れていたということもあって占い師になりました。
名越:占いって、あらゆる職業よりも先んじてあるぐらいの職業やったと思いますね。例えば大昔、森の中にひとつの集落
があったら、「今日はあそこで狩りをしたら、獲物がたくさんいそう」みたいなのが、やけに当たる人って絶対いた
はずなんですよ。その人にとっては、自然の状況を読んで極めて科学的ではあったかもしれないけどね。他の人が再
現出来なければ、「その人には自分たちには持っていない力があるんだ」って思いますもん。そういったところに占
いのルーツがあると思いますね。
藍: 困った時って、どうしても頼れる人に何かを求めてしまいますよね。人の心って、決して強くはないですから。迷いや
悩みに支配されて、抜け出せなくなる事もたくさんあると思います。私も、励みとなるようなパワーをあげられるよう
な鑑定を心がけているんですけど……。
名越:現象的に言うと、みんな暗闇の中を彷徨ってるんだけど、本当はちょっと1日に5分くらい努力するだけで光は見えて
くるんです。でも、たった5分の努力もしないっていう人が増えてるね。昔に比べたら便利な世の中で、自力で何とか
なるっていうことが増えてきたのに。
藍: たしかにそうですね。
名越:でも、どっちの方向に向かって努力したらいいか分からない。それは、大人が誰も教えないからです。根本的にどう
やったら人間が成長できるのかっていうことを、学校でも家庭でも教えなくなっちゃった。「人間はちっとも成長で
きない」「成長したってなんにも得することはない」って僕達は刷り込まれて、今の日本人になってる。だから動け
ないの。動いたらすぐなのに……というのが僕の見解です。
藍: 話は変わって、名越先生は恋愛に関する著作もたくさんありますよね。私も恋愛に関
する相談が多いんですけど、名越先生が考える恋愛上手な人・下手な人の特徴とかあ
りますか?
名越:ざっくり言っちゃうと、イライラしがちな人とか怒りっぽい人は恋愛下手。
「恋愛すると心が豊かになって、愛されキャラになります」って言葉よく聞くでしょ?
臨床をやってきた僕からしたら全部ウソですよ。幸せにしてもらおう、力をもらお
う、確約をもらおう…8割以上の人がそういう恋愛に陥って、イライラしてますね。
だから僕は「素敵な人と巡り会ったんだから、もっと気持ちを広く持って明るくい
ましょう」と言いたい。
藍: 本当にそうだなと思います。女の人はイエス・ノーはっきりさせたいんですよ。でも、男の人は意外とグレーゾーンがOK。その違いが怒っちゃうポイントかも
しれませんね。あと、名越先生のように心理学を研究されている方だったら、「恋愛におけるテクニックを教えてください」みたいな聞かれ方をしませんか?
名越:そんな時は「ちょっとでも性格良くしたら絶対勝てる」って言います。「ファッションやメイクはみんな研究してるでしょ。でも性格良くしようなんて誰も
思わないから一人勝ちできるよ」って。それが一番の近道だと思います。藍先生はどのようなアドバイスをしますか?
藍: 私は、よく「聞き手上手になりなさい」って言います。自分にとって何かおかしいなってことを言ってきたとしても、いきなり否定するのではなく、まずは受
け入れましょうと。そこからコミュニケーションが成立してきますよってアドバイスしますね。そういえば、最近は不倫の相談が多いんですよ。
名越:それは藍先生が相手だからこそ打ち明けられるんじゃないかな?
藍: いやいや、世の中で不倫が多いんじゃないですかね。例えばW不倫をしている人で、自分の家庭は壊したくないけど、相手の家庭は壊れて欲しいって考える人
がいたりするんですよ。どうやったらその怒りとか嫉妬の感情を取り除いてあげられるか、私も日々考えているんですが…。
名越:不倫に関わらず、嫉妬っていうのは怒りの中で一番根深い。僕はこれまで4000人以上のカウンセリングをしてきまし
たけど、根深い怒りがある人で幸せになった人は一人もいない。恋愛でも嫉妬にとらわれてる人は、すごく合理的に
自分の得ばっかり考えているようで、実はものすごく損してるんです。藍さんの専門領域でいう「運気」みたいなも
のがすごい悪くなるんですよ。
藍: 分かります。
名越:対人関係って一対一の関係ではないですよね。自分の周りに何十、何百っていう人の網の目があって、その中で自分
がネガティブな思考という毒ガスをまいていったら、周りにもすごい影響が出る。周りがその毒ガスのせいで怒り出
したら、今度は自分がまたその毒ガスを受けるっていう悪循環。何倍にもなって返ってくるのが嫉妬・怒りの本質で、
その恐ろしさに気付いていないんですよ。
藍: 私たちはそれを念の跳ね返りって表現します。でもいくら伝えても、なかなか分かってもらえないんですよね。相談さ
れる方を否定しないで、母親のような愛情を持って接するのが、最近は嫉妬とか怒りの解き方なのかなって思っている
んですが。
名越:それについてはね、臨床してきてなるほどって思ったことがあるんですよ。ちょうど仏教の理論を勉強した時なんで
すが、仏教っていうのは宗教の側面以上に心理学とか哲学の側面の方が大きいんですけど、その中にはっきり書いて
ある。嫉妬とか妬みとかも含めた全部の怒りのことを瞋(シン)といいますが、この瞋のある人には大悲(ダイヒ)
をかけてあげなさいって。つまり慈しみですわ。愛情っていうのとはちょっと違う慈しみ。まさに母性に近い。
そうすると、その怒りが少しずつ溶け出していきますよって。
藍: 名越先生が研究されている心理学や精神学と仏教って、かなりリンクしている部分があるんですね。占いとリンクして
いるところはありますか?
名越:結局、占いであったって精神学や心理学であったって、人間を見るということが本質であるでしょう?
カウンセラーだって占い師さんだって、その人がどういうふうに人と出会い、人生をどう見てきたのかっていうこと
が、全部反映されているっていう意味では、全然違和感ないんです。おんなじ土俵だと思います。
藍: 精神医学というものには、医学だという強みや信憑性がありますよね。そういったものと占いが同じ土俵にあると言っ
ていただけて、なんだか自信をつけていただいた気がします。私は、人が持ってるエネルギーっていうものを観るんで
すね。相談される方のお声を聞いただけで、その人の持っている背景が見えてくるというか。
あとは波動を感じる…こう言うと、占いを知らない、信じていない人にとっては「ん?」と思われるんです。
名越:でもね、僕も相手の声だけで、判断することありますよ。判断しちゃってる、体の細胞が。
長年のカウンセラー・精神科医としての臨床経験から、直感的にものを見るところがあるんですよね。あとね、何カ
月か霊感がある人が、人を見ただけでどれだけその人の過去が分かるか実験したことがあるんです。8割くらいは実際
の過去と合致してた。そこで僕が思ったのは、霊感ってあるということ。もっと言うと、強い弱いあるけど、みんな持
ってる力なんですよ。
藍: 精神科医としての実績のある名越先生と、このようなお話ができて、とても有意義なものになりました。お忙しいとこ
ろ、本当にありがとうございました。
名越:こちらこそありがとうございました。
現代社会の問題点から恋愛における心構えなど、精神科医の名越先生ならではのお話が聞けて、とても有意義な時間となりました。
現場にいるおふたりだからこそ見えてくることがあるんですね。これからも、名越先生の興味深い研究の発表を楽しみにしています。
どうもありがとうございました。
名越 康文なこし・やすふみ
1960年、奈良県生まれ。大阪星光学院中学校・高等学校・近畿大学医学部を経て、大阪府立中宮病院(現:大阪府立
精神医療センター)にて精神科緊急救急病棟を設立し、責任者を務める。1999年に同病院を退職。
引き続き臨床に携わる一方で、テレビ番組のコメンテーター、雑誌連載、映画評論、漫画分析などさまざまなメディアで
活躍している。
Cielo藍しえろ・あい
毎月800~1000人の鑑定をこなすテレビでも人気のフューチャー占い師。
デビュー後すぐ、その類まれなる霊感から注目を集め、多くの著名人の鑑定も手がける。
連日多くのお客様が列をなす、Cieloの代名詞とも呼べる、人気占い師。